「レトロトレイン駒子」 乗車記
 
Update 2018.7.1



1999年(平成11年)8月21日〜29日、川端康成生誕100年記念イベントの一貫として、上越線・越後湯沢―水上間にEF5861牽引による「レトロトレイン駒子号」が高崎運転所の旧客3連を使用して運転されました。
運転期間が9日間と長いこともあり、この機会にと61号機牽引列車に乗るのも良いなと思い、運転2日目の8月22日に同列車に往復乗車してきました。せっかくなのでその模様をここで紹介したいと思います。
例によって写真クリックで大きなサイズが別画面で表示されます。

また、この日に録音したデータのリンクも貼りましたので併せてお楽しみ下さい。



回9730レ 越後湯沢駅入線

今回の運転期間中、61号機と旧客編成は石打駅構内に留置されました。その為、石打〜越後湯沢間に毎日回送が設定されました。写真は「駒子号」始発の越後湯沢に入線するところです。61号機の前面には列車名の由来となった川端康成の小説「雪国」に登場する駒子のイラストの描かれたヘッドマークが掲げられています。

 

回9730レ 越後湯沢駅入線

目の前をゆっくりと通過する回送列車。この年4月の中央線御召し牽引から4ヶ月以上経過しましたが、61号機の車体はまだまだ綺麗でした。次位のオハニ36 11も7月に全検出場したばかりでこちらもピカピカ。国鉄書体の「荷物」の文字がいかしてます。
「駒子号」は越後湯沢〜水上間の往復のみで運転区間は短いものの途中、上越線のサミット・三国峠があり清水トンネルやループ線などなかなか見応え(乗り応え?)がある内容となっています。

 

9730レ 越後湯沢駅

越後湯沢にて発車を待つ「駒子号」。編成は
←越後湯沢 スハフ42 2234+スハフ42 2261+オハニ36 11 水上→
の3連で、ピカピカのオハニに比べてスハフ2両は塗装も色褪せかなりくたびれた印象です。スハフ42の貫通路には転落防止の柵が設けられています。
この日は晴れたり曇ったりで途中雨がぱらつくこともありましたが、開け放った窓からロクイチ牽引の旧客を堪能するにはまずまずの日和でした。

 

9730レ オハニ36 11車内

入線後、待ち構えていた乗客が一斉に車内に乗り込みます。ご覧の様に座席はほぼ満席。

私が乗車したのはオハニ36で全検を受けたばかりの車体は内外共にピカピカ。車内に入ると塗りたてのニスの香りが漂い何とも懐かしい気持ちになりました。木製のしっかりした座席や文字通り網で編まれた網棚も懐かしかったです。

今回は何と偶然往復とも1号車のオハニ36の全く同じ席の指定が取れました。指定席を購入した際、駅の窓口氏も驚いてました。とは言え復路は録音の為にスハフ42に移動していたので、結局そこに居ませんでしたが…。(^_^.)

サウンド再生:往路の車内音

9730レ オハニ36 11車内

越後湯沢を発車し山間を軽快に走る「駒子号」。往路復路それぞれ土樽での運転停車を含め1時間ほどの乗車時間。開け放たれた窓から入る風が実に爽やか。オハニ36は木のぬくもりの漂う室内と白熱灯のライトで実に良い雰囲気です。今回の編成内では唯一の白熱灯車でした。車内の先にチラリと見える荷物室には昔の越後湯沢のの写真のパネルが展示され、自由に出入りできるようになっていました。

9730レ オハニ36 11車内

車内では子供も大人も一緒になって流れる車窓を楽しんでいました。走る列車の窓を開けて風を浴びる開放感は最高です。かつては当たり前の光景だったのに、冷房の普及で今やこの方が贅沢になってしまいましたね。

9730レ オハニ36 11車内

61号機を先頭に、毛渡沢橋梁を行く。こうして窓から顔を出して景色を楽しむのも良いものです。

「ポゥオ〜」と言う懐かしいゴハチの汽笛もたくさん聞くことができました。
 

9730レ オハニ36 11車内

途中、土樽では上りは10分、下りは30分の長時間停車がありました。

停車前に車内で冷たいおしぼりのサービスがあり、停車中はほとんどの乗客がホームへ出て景色を見たり写真を撮ったり、思い思いの時間を過ごしていました。

私は人の居ない間に車内のスナップ。青のシートと赤茶色の木製部とのコントラストが美しいですね。
 

9730レ オハニ36 11車内

細かいタイルの敷き詰められた洗面所。手を掛けた仕事ですね。

洗面所、トイレは例によって使用禁止で、赤錆びた排水口や蛇口がちょっと寂しげ…。(・.・;)
 

9730レ オハニ36 11車内

使用禁止とは言え、トイレのドアも綺麗にニスを塗られていました。化粧板では無い本物の木の質感が良いですね。今となってはこれまた贅沢ですね。


「便所」のレトロな書体の標記と「停車中は使用しないで下さい」の文字が懐かしい…。国鉄時代、黄害が問題になったなんて今となっては想像できませんね。そもそも「黄害」と言う言葉自体死語でしょうか。

流石にトイレの中までは撮りませんでしたが、撮れば良かった??
 

9730レ オハニ36 11車内

これも懐かしい「JNR」マークの入った灰皿。古い丸っこい形の物でないのが残念ですが、禁煙車扱いながら残っていることに感動。

 

9730レ 土樽駅

この「レトロトレイン駒子」は、小説「雪国」の作者の川端康成 生誕100年記念イベントの一つとして運転され、車内には「雪国」の主人公・島村と駒子に扮した地元の方が日替わりで添乗していました。

右側の駒子嬢は走行中、「雪国」や車窓の見所を車内放送で話されましたが、なかなか流ちょうでした。放送で言ってたのですが「第49代?佐渡ミス小町?」と言うことでした。録音で確認したんですが走行音で良く聞き取れません。湯沢町観光協会がらみだと「ミス駒子」ではないかとも思いますが、「小町」と聞こえるんでどうなんでしょう。

お二人とも着物姿が良く似合っています。せっかくなのでちょっとお願いしてロクイチをバックにお二人を撮らせて頂きました。
 

9730レ 水上駅
オハニ36 11車内より

土樽を発車した「駒子号」は清水トンネルを抜け、湯檜曾のループを通り快調に峠を下り、多くのファンが待ちかまえる水上橋梁を渡って無事に水上に到着。

61号機は折り返し下り「駒子号」に備えてすぐさま列車から切り離されました。

ヘッドマークはすでに下り方に付け替えられています。ヘッドマークはお世辞にも洗練されたデザインとは言えませんが、地元の方が一生懸命描いた感が出ていて微笑ましくはあります。
 

オハニ36 11他 水上駅

個人的に思い入れの深い水上駅構内に佇む「駒子」編成。隣の1番線に湘南色の115系がいるのも良い感じです。2番線ホームでは冷たい麦茶のサービスもありました。

 

機回し中の61号機 水上駅

水上駅独特のカーブした構内をゆっくりと通過する61号機。

ロクイチが通っている1番線と旧客がいる3番線の間の中線は線路こそ残っていますが既に架線が外されています。

本来なら機回しはここを通すところなんでしょうが…。嗚呼。(現在は線路も剥がされてしまっています。)(T_T)
 

9731レ 土樽駅  スハフ42 2234車内より

水上から折り返しの「駒子号」では、オハニの自分の席ではなく3号車スハフ42の車端部から61号機の顔を眺めながらの生録となりました。水上発車時から録音していたので走行中は写真は撮れず、これは土樽駅での30分の停車中に撮ったもの。皆さんご存じのように61号機の正面の切り抜きナンバーは他のゴハチと異なり「E」と「F」が離れた独特の仕様です。

サウンド再生:復路の車内音
 

9731レ 土樽駅  スハフ42 2234車内より

普段、なかなか拝むことができないこんなアングルも旧客ならでは…。前面ステップの欠き取り具合や、誘導踏み段の形状も良く分かりますね。連結器解放テコなどメッキ部分が曇ってますが、これは新清水トンネルの冷気で冷やされたため。

 

9731レ 土樽駅
スハフ42 2234車内より

これも土樽停車中のカット。こんな感じで61号機の顔を眺めながらの生録でした。

転落防止の柵がちょっと…ですが、走行中にガラス越しでなく、生でロクイチをずっと見れたのは生まれて初めてでした。

新清水トンネル進入時に大量の鉄粉?の洗礼を受けましたが、とても有意義な時間を過ごすことができました。

61号機の窓が曇っているのは、新清水トンネル内で冷やされた車体が外の陽気で曇ったもの。それでお分かり頂ける様に、トンネル内は8月と言うのに半袖では寒いほどでした。
 

9731レ 土樽駅

のどかな午後のひととき、広々とした土樽駅構内でしばしの休息をとる61号機。復路の停車時間は30分あるので機関士や乗客もホームに出てのびのびと過ごしていました。長大なホームにカマ込みで4両の編成は少々物足りないですね。せめて後2両…いや1両多ければ…と思ってしまうのは贅沢と言うものでしょう。

現在の土樽駅は、この写真でロクイチが停車している下り副本線と一番手前の上り副本線上に新たにホームが設置され、ここでの列車の退避はできなくなっています。優等列車がひっきりなしに走っていた当時の上越線の栄華を感じさせる光景が消えていくのは寂しいですね。

 

9731レ 土樽駅

時間がたっぷりあるので61号機の美しいサイドビューを。このとき、良く見ると61号機の足周りから何やら煙が上がっていました…。(@_@;)

 

石打駅構内 留置線

越後湯沢到着後、2分の待ち合わせの下り普通列車に飛び乗り、回送より一足先に石打に到着。駅の反対側の側線脇に移動して回送の到着を待ちました。
回送は石打到着後、すぐにそのまま長岡方に引き上げ、折り返し推進運転で側線1番?に停車。61号機は切り離され駅構内の水上方に引き上げて列車の上り方に連結。ヘッドマークを外しパンタを降ろして翌日の仕業までこの場で駐泊します。パンタを降ろす前に一枚。ヘッドマーク無しのロクイチと茶色一色の編成が渋いです。イベントなどでは仕方ないところですが、やはりヘッドマーク無しのロクイチの方が私は好きです。

これにてこの日の「駒子」はおしまい。この後、越後湯沢に戻り、新幹線で帰路につきました。

 

車内で配られた乗車証(上)と指定券(下)



以上で乗車記は終了です。今にして思えば、通常の臨時列車としてロクイチ牽引の旧客に乗車する機会が連日あったなんて、なんと贅沢な企画だったのかと思います。いつか又、こんな企画が実現したら嬉しいですね。

なお、この日に録音したデータは音鉄コーナーにまとめてありますので、よろしかったらお聞きください。



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